2013年10月アーカイブ

 ネット上でたまたま自閉症児の出現率とその父親の年齢の関係についてのある「コピペ」を見かけたのだが、内容に違和感があったので日本語版Wikipediaの自閉症のページを眺めていたら、案の定(と言うべきか?)、そのコピペと同じ内容の記述を見つけた。

Wikipedia>自閉症>原因
なお近年の米国の研究で、父親が中高年のときに授かった子供である場合に新生児が自閉症になりやすいという知見がある。同研究によると、父親が40歳以上の新生児は、自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30 - 39歳の父親と比較すると1.5倍以上であったとされている。一方、母親については、年齢が高い場合でも多少の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子供の自閉症に与える有意な影響は認められなかった[7]
 で、英語版WikipediaのPaternal age effect(父親の年齢効果)というページにちょうどAutism spectrum disorder(自閉症)の項目があったので、比較してみようと読んでいるうちに、どんどんげんなりしてしまった。同項目には日本語のWikipediaに紹介されている上掲の2006年に発表されたReichenberg の調査(正確には、米国の研究というより、米国の研究者によるイスラエルでの調査であるようだ)を含めて、同様の調査が12件ならべて紹介されているのだが、ほかの調査で数字を示しているところは父が35歳・40歳以上の場合の自閉症発生率が、だいたい20代の1.2~1.4倍付近に収まっていたのである(最大は、父親が10歳年を取るごとに22%ずつ危険度が上昇、という表現を採ったカリフォルニアの調査であろうか)。いずれにせよ、日本語Wikipedia(およびコピペ)が採用していた6倍という数字とかなり開きがあるわけだが、Reichenbergの調査に対して母集団で2倍、自閉症児数で10倍の規模で行われたDurkinらによる2008年の調査では、40代以上の父親は25-29歳の父親に対して1.4倍の自閉症発生率でしかなかったと主張している(ちなみに35-39歳の母親の場合も1.3倍の危険度で似たようなものだが、夫が同年代以上である場合が多いとも思われる)。
 コピペのネタ元と思しきReichenbergの調査は母集団は十万人を超えるものの肝心の自閉症児が110名しか含まれておらず(それで出生時に父親が40代以上の自閉症児は14名)、サンプルが少ないと統計結果が不正確になりやすいのは言うまでもないわけで、このように一件だけ突出した「倍率」をたたき出している比較的小規模な調査のみを信頼するのはどうなのか。
 父親の加齢と自閉症児の発生に一定の相関があること自体はほぼ共通した認識であるようだが、そこまで激しいものではないことは、身辺等から予感する人も少なくないかもしれない。まあ、ここでこんなこと書いてもどこぞのコピペは拡散してゆくだけなのだろうな。

 大学時代に所属していたサークルの部長が当時『父親がすでに60歳を超えている』と言っていたのを思い出した。おそらく父が40代の子供だったのだろうが、彼自身やや個性的ではあった気もするが、少なくとも自閉症その他精神疾患のような感じはしなかった。
 検索している内に、山本五十六は父親が56歳の時の子で、俳優(?)の河相我聞は父親が70歳くらいの時の子であるらしいことを知った。

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