2022年10月アーカイブ

神経症的傾向に伴う2つの特徴
1.目標追求に伴う無分別性
2.神経症的傾向を現すまいとして起こった不安の反動であること

クレアの強迫的傾向
1.自分の願望や欲求を強迫的に控えめにする
2.自分のことは他人のことほど考慮しない
3.他人に卓越しようとする強迫的欲求(防衛的な高慢さ)

神経症的傾向の分類
1.愛情と承認への神経症的欲求
2.自分の人生を引き受けてくれる相手がほしいという神経症的欲求(マゾヒズム?)
3.生活領域を制限しようとする神経症的傾向(ミニマリズム)
4.権力への神経症的欲求
4a.論理的・推理的に割り切ることによって自他を制御しようとする神経症的欲求
4b.意志力の全能を信じようとする神経症的欲求
5.人を利用し、人に勝つためには手段を選ばないという神経症的欲求
6.社会的に認められ、名声を博したいとの神経症的欲求
7.自己を称賛されたい神経症的欲求(自己愛)
8.個人的業績への神経症的野心
9.自立と独立への神経症的欲求(何人の助けも不要)
10.完全で非の打ち所のない状態への神経症的欲求


神経症的傾向の自己イメージ3様
1.卓越した理知
2.(受動的)愛の優越
3.完全なる自律・自足

同居する自己イメージの矛盾や相反が神経症的「症状」を生む。

歪んだまま自己正当化(二次的防衛)が始まる。

「分析操作というものは一歩一歩悪循環をときほぐすことにある。」p.81

精神分析過程の三段階
1.神経症的傾向の認識
2.その原因、顕現状態、結果の発見
3.その神経症的傾向とその人のパーソナリティの他の部分との相互関係、特に他の神経症的諸傾向との関係の発見

すぐに(パーソナリティの)変化を積極的に受け入れられるとは限らない。p.84


追記(2022/10/08):

患者に対決をせまる主な任務の三項目 p.95
1.できるだけ徹底的にかつ明けっぴろげに自己表現をすること
2.自己の無意識的欲動とそれが彼の人生におよぼす影響を知ること
3.彼と彼の周囲の外界との関係を乱すような性格傾向を改造する能力を成長させること

「自由連想からは自分が耐えられることしか掴まない」p.193

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《症例クレア》

「最近の一連の連想を概観すると、彼女は殆どの出来事の重点が予期しない援助や贈り物におかれていることを知って驚愕したのである。」p.217

「クレアがこの時期に発見したことで最も重要なことは、次にのべるようなことがらに対する強い反抗があるのに気づいたことである。すなわち自分自身の人生を歩むこと、自分自身の感情を味わうこと、自分自身の思考を思考すること、自分自身の興味・計画をもつこと、要約すれば自分自身であり、自分自身の中に権威を見出すこと、などに彼女は反抗したのであった。この発見が彼女のほかの発見と違うところは、それが全く感情を伴った洞察である、ということであった。」p.239

「今やっと彼女にわかったことは、前夜の自分の反応は実は彼との約束がふいになってがっかりしたためにおこったのではなく、彼が彼女の感情を無視したというその冷淡無情さに起因していることであった。」p.222

「たしかに彼女は自分の不幸を誇張したが、苦境を訴える人もなく、電話をかける相手たるピーターもいなかった。全人類の中で自分が一番哀れだと感じるだけで、援助がやってくると信じるほど彼女はもう非理性的ではなかった。」p.243

魔術的救助。p.243

「そこで問題は結局、一人でいられないという一般的なことではなく、排斥されることへの神経過敏さであることがわかったのである。」p.251-252

「このことと関連してクレアが思い出したのは、母と兄との緊密な結びつきであり、この結びつきから彼女はしめ出されていた。母や兄の目から見れば自分は厄介者にすぎない、というふうに彼女が感じさせられたいろいろの事件が浮かびあがってきた。」p.252

「もし彼女が、魔術的援助願望を彼女の依存性に結びつけて考えることなく、この両者が相互に不可欠の要素であることを知りえなかったなら、この魔術的援助願望を徹底的に克服することはできなかったであろう。」p.270

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「抵抗の背後にある欲動の発達をとがめてはならない。この欲動が擁護しようとしている神経症的傾向はほかの人生対処法が全部失敗に終わったとき、彼にひとつの生きる手段を与えてくれたものなのである。」p.297

「どんな抵抗でもあるていど強くなると、現実的にそれは分析の限界へと変貌する。」p.298

「今日の社会では、経済的に独立している人は象牙の塔にたやすく引きこもれる。ところが資力の貧しい人はよほどほかの欲求を最小限にきりつめないと、世間から身をひくことができない。ある人は威光や権力を鼻にかけるのが許されるような環境で育っているが、しかしまた別の人は無から出発したけれども外的環境を心にくいまでに利用して、ついには威光、権力などの目標を意のままにするであろう。」p.301

「重症の神経症は体にきつい鎧を着たように力一杯活動的な対人関係をもつのを邪魔する。そのため人生に対する怒りが発現してくるが、これはニイチェが人生羨望といったように、のけものにされているということに対する深い怒りである。自分に対しても人に対しても、敵意や軽蔑が非常につよい場合は、むちゃくちゃになるのが一番気持ちにぴったりする仕返しの方法である。だから人生の与えてくれるものすべてに対して"ノー"ということがのけものにされているものとしては唯一の自己表現方法なのである。」p.302
※ネット検索ではニーチェの「人生羨望」なる語はヒットしない。

「(自己分析の試みに際して伴う)もうひとつの偏向は、特殊な現在の障害を幼少期のある特定の経験そのままの繰り返しであるとみなす根づよい傾向である。自分を理解しようと思えば、自分の成長に作用した要因の理解が必要なことはいうまでもない。性格形成に及ぼす幼少期経験の影響は、フロイドの主要な発見のひとつである。しかし現在の性格形成に寄与しているのは、いつでもわれわれの幼少期の経験の総和である。従って現在のあるひとつの障害と幼少期のあるひとつの経験との関係だけを抜き出して解明したところで無駄なことである。現在の特性は現在の性格に内在する諸要因の全体的相互作用の現れとしてのみ理解できるものである。」p.308

「(先天的な素質による分析の限界に関して)或いは多かれ少なかれ意識的に決心するのは、次のようなことである。人間関係の問題は―そのあるものについては彼は自覚し理解しているが―彼のエネルギーにとって非常な負担であること、しかも平和な生活を送る唯一の方法、創造力を保つ唯一の方法は、人から遠ざかること、人や物への欲求を最小限に制限すること、そして欲求の最小限化という状況下なら、何とか生存をつづけうるということ、などである。」p.311
※本原書は1942年に出版されたが、ほぼ社会的ひきこもりのような概念である。あるいはシゾイド。日本では一時マスコミや斎藤環によって、引きこもりが日本特有の現象であるかのように喧伝されたが、虚偽である。

「完全な分析などというものはない。」p.315

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《訳者あとがき》
「ホルネイはフロイドを否定したのではなくて、ただ修正しただけだといっているが、フロイド分析学にとっては根本的な本能論や人格構造論(イド、自我、超自我)を斥けている。ホルネイによれば、人間を動かすものはフロイドのいうように性欲と攻撃欲ではなくて、安定感への欲求であるという。安定感への欲求は何に由来するのか。子供は親からかまってもらえないと不安を感じる。これをホルネイは根源的不安(basic anxiety)と名づけた。根源的不安は具体的には孤独感や無力感、或いは絶望感として感じられる。」p.318-319
※訳者あとがきは多数の雑な例がホーナイの主張を補強する(つもりの)ものとして出されていて怪しいのだが、さすがにこの箇所はそのまま受け取っても構わないだろう。


追記2(2022/10/09):
 読みながらメモしていったのでエントリーは複数回に分かれている。現在の精神医療では薬物治療にシフトしていて、精神分析的手法はあまり取らなくなっていると思われるが、無意味でもないと思ってまとめてみた。
 本書は基本的にクレアの症例のみを主軸として内容を展開している。恋人との何気ない行き違いから、自分の性格的傾向の自覚、そして、育った家庭において兄と密着した母により常に蔑ろにされていたことに、クレアの自己分析は行き着く。敗北主義的な傾向すらあり過剰に依頼心の強かったクレアは、分析によって過去の自分を脱却し立派に自己主張ができるようになったと述べられているわけだが、劇的変化の過程や機序はちゃんとは描かれていないと言っていいと思う。一応「真我を回復する」というモチーフは提示されるものの、偽りの自己の一般的なしつこさを念頭に置くとき、(分析への)抵抗の弱さにも違和感を持つし、クレアはとにかく自己分析をして好くなったのだ、と受け取るしかないという感じになってしまう。別言すれば、本当にこれで一件落着したのか疑いが残るわけなのである。
 クレアが行ったのは、ホーナイの治療過程での補助付きの自己分析だと思われ、通常の対面分析にかなり近い自己分析ということになり、その点注意が必要だ。クレアが純粋に単独で行った自己分析をホーナイがあとから聴いたという感じではない。むしろ主治医の誘導あるいは指導でゆるく守られた中での自己分析であると思われる。

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