自己愛的な親

 英語版Wikipediaの"Narcissistic parent"の項目の拙和訳です。今のところ日本語版には対応項目はありません。例によって「関連項目」以下は省略していますが、あまりに素っ気ないので英語版へのリンクを張っておきました。


自己愛的な親

 自己愛的な親とは、ナルシシズムあるいは自己愛性人格障害に冒された親のことである。通常、自己愛的な親は独占的にそして所有物のように彼らの子供たちに接し、子供たちの主体性が育つことに脅かされている[1]。これは、子供が彼らの要求や要請を満たすためだけに存在していると考える親に伴う、自己愛的な愛着パターンをもたらす[2]。自己愛的な親はしばしば脅しや感情的な虐待によって自分の子供をコントロールしようとするものだ。自己愛的なしつけは子供たちの心理的発達(論理的思考や感情的、倫理的、社会的な行動あるいは態度)に不利な影響を与える[3]。親の期待を満足させるよう子を型に嵌めて操作するため、個人としての境界は頻繁に無視される[4]。
 自己愛的な人々は自尊心が低く、他人からの評価をコントロールしたいと思っている。そうしないと、責められ拒絶され、彼らの個人的な欠点が晒されることになると怖れているのだ。自己愛的な親は自己陶酔的で、しばしば誇大なレベルにまで達する。彼らはまた硬直的で子供を育てるのに必要な共感性に欠ける傾向がある[5]。


目次
1 特徴
2 ナルシシストの子供たち
2.1 短期的および長期的影響
2.2 メンタルヘルスへの影響
3 関連項目
4 参照
5 関連書籍
6 外部リンク


特徴
 ジークムント・フロイトの臨床研究で使われた自己愛という用語には、自己強化、自尊心、脆弱性、人々からの愛情を失うことや失敗に対する恐れ、防衛機制への依存、完璧主義、対人葛藤などの行動が含まれる[6]。
 自尊心を維持し、脆弱な本当の自己を守るために、ナルシシストは他者の行動、特に自分の延長とみなす子供の行動をコントロールしようとする[5]。それ故、自己愛的な親たちは、ファミリーイメージを維持したり、母や父に誇らせるための、「片想い」について言及することがある。彼らは、自分の子供が弱さを見せたり、大袈裟だったり、わがままだったり、期待に沿わなかったりするのを非難することもある。ナルシシストの子供たちは、特に人前においてや他人のために、自分の役割を果たしたり特技を披露することを学ぶ。彼らは概して、自分自身であることを愛されたり評価されていると感じた記憶があまりない。代わりに、彼らは愛と評価の経験を自己愛的な親の要求に従うことに結び付けている[7]。
 破壊的な自己愛的な親たちは、注目の的であることを一貫して必要としたり、誇張し、褒め言葉を求め、子供をこき下ろしたりするパターンを持っている[8]。非難や批判あるいは感情的な脅迫といった形での懲罰や、罪悪感を誘発しようとする試みは、親の望みや彼らの自己愛供給の必要に対する服従を確実なものとするために使われることがある[5]。


ナルシシストの子供たち
 ナルシシズムは世代をわたって展開する傾向があり、自己愛的な親はナルシシストや共同ナルシシストの子供を順に生み出す[9]。自信のある親あるいは程よい親は子の自律的な成長を認めることができるが、自己愛的な親はそうではなく自らのイメージを向上させるために子供を利用することがある[10]。自己高揚あるいは子供からミラーされ賛美されることに関心がある親は[11]、子に、親の感情的・知的要求のパペットのように感じさせているかもしれない[12]。
 自己愛的な親の子供たちは家庭内での支援に恵まれないことがある。親の行動を観察することで、子供はごまかしやあやまちが自分の欲しいものを手に入れるための効果的な戦略であることを学ぶ。また、子供は偽りの自己を発展させたり、自分の思い通りにするために攻撃や脅迫を使うことがある[13]。彼らは、友達や他の家族の行動を観察した場合に、むしろ反対の行動に注力することがある。自己愛的な親の子供が、他の家族において安全で本物の愛を経験したりその演じられている例を見たりすると、自分の人生と健全な家族の子供の人生の違いを識別したり違いに基づいて行動することがある。例えば、家庭での共感性の欠如や不安定さが、子供自身の共感性や尊重されたいという欲求を高めるかもしれない。同じように、家庭内での強烈な感情コントロールや境界の無視が、感情表現に対するその子の価値観や、彼らの他者に対する尊重の拡張欲求を高めるかもしれない。子は親の行動を観察しているが、多くの場合、同じような行動を取る側にいる。家庭に起因する苦痛や苦悩に代わるものが現れた場合に、子供はより快適で安全を誘発する行動に焦点を当てることを選ぶことができる[13]。
 自己愛的な子育てに共通するいくつかの問題は、適切で責任ある養育が欠如していることに起因している。これは、子供が虚無を感じたり、愛情関係に不安を感じたり、想像上の恐怖を発展させたり、他人を不信に思ったり、アイデンティティの衝突を経験したり、親とは別の存在に成長することができずに苦しんだりすることの原因となる[14]。
 その家族の傷つきやすく罪の意識に苛まれている子供は、親の欲求を満たすことを学び、親の希望に沿うことで愛を求めるかもしれない。親の「愛」を得ようとする中で、子供の正常な感情は無視され、否定され、最終的には抑圧されてしまう。罪悪感と羞恥が子供を発育遅滞に閉じ込める。攻撃的な衝動や怒りは、分裂し、正常な発達と統合されないことがある。一部の子供たちは防衛機制として偽りの自己を発達させ、人間関係において共依存に陥る。その子供の本当の自己に対する無意識の否認は、真正の自己を思い出させるどのようなものも恐れて、自己嫌悪のサイクルを永続化させることがある。[13]。
 また、自己愛的な子育ては、子供が被害者やいじめっ子のどちらかになったり、貧弱なあるいは過度に膨張したボディイメージを持ったり、薬物やアルコールを使用・乱用する傾向があったり、注目を集めるために(潜在的に有害な方法で)行動することにつながる[15]。

短期的および長期的影響
 子供たちは脆弱性を原因として、自己愛的な親の行動から極度の影響を受ける[16]。自己愛的な親は、子供を導いたり子供の人生上の第一の決定者であるという通常の役割をしばしば悪用し、過度に所有的で支配的になる。この所有性と過剰な支配はその子の力を奪う。親は子を単なる自分の延長と見なしている[17]。これは、子の想像力や好奇心レベルに影響を与えることがあり、彼らはしばしば外発的な動機付けのスタイルを発展させることになる。この高レベルの支配は、自己愛的な親が、彼らに対する子の依存を維持しなければならないためである可能性がある[17]。
 自己愛的な親はすぐに怒って[16]、子供を身体的・精神的な虐待を受ける危険にさらす[18]。怒りや罰を避けるため、虐待的な親の子供は、親の要求にことごとく応じる最終手段にしばしば助けを求める[19]。これは、子供の幸福感および自分で論理的な判断を下す能力の双方に影響を与えるが、彼らは大人になると自信や自分の人生をコントロールする能力をしばしば欠く。アイデンティティの危機、孤独感、自己表現に関する苦心なども、自己愛的な親に育てられた子供によく見られる[17]。大人になって自己を発見するのにもがくのは、子供の頃に経験した相当量の投影性同一視に原因がある[17]。親への行き過ぎた同一視のため、子は自分自身のアイデンティティを経験する機会を一度も得られないかもしれない。

メンタルヘルスへの影響
 研究によると、自己愛的な親の子は、養育者が自己愛的だと認識していない子供に比べて、成人期に鬱病になる率が有意に高く、自尊心が低いことが分かった[17]。親の子に対する共感の欠如がこれに寄与しており、子供の欲求はしばしば否定され、感情は抑制され、すべての情緒的幸福は無視される[17]。
 自己愛的な親の子供たちは、服従し同調するように教えられ、個人としての自分を見失うことになる。これは、子供が自分自身であることで親から評価されたり愛されたりした記憶をほとんど持たず、代わりに愛や評価を同調と結び付ける原因となりうる[17] 。子供は自己愛的な親と距離を取ることで利益を得ることができる。自己愛的な親の子供たちの中には、親との関係を毒性のものであると見なすようになった場合、思春期に家出を試みる者もいる[18]。


関連項目
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参照
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参考文献
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外部リンク
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(Translated from the article "Narcissistic parent" on Wikipedia)

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