微妙なサム・ヴァクニン

  前回あまり気が進まずにWikipediaの"Narcissistic supply"(自己愛供給)のページを訳したら、目次の訳を間違えてアップしていた。さっき訂正したけど、目次から間違えるとは我ながらひどい。校正で本文は一回通して見直したが、その時なぜか目次部分をスルーしていた。

 以前紹介したサム・ヴァクニンがこの"Narcissistic supply"の概念を推していて、その事自体はわりといいところを突いている気はするのだが、彼の著作を読んでいると、それ以前に彼のNPDであるという自認が怪しいものに思えてくる。その理由は主に、サム・ヴァクニンが刑事事件(証券詐欺)で有罪判決を受けているということと、彼がNPDとサイコパスの類縁性を異様に強調することにある。サイコパスがナルシシスティックであることは専門家の一致する所見だが、多少似たところがあるとしても両者は違うものだ。
 サム・ヴァクニンは、(医師資格もないのに)著書でDSMにおけるNPDの診断基準に独自の修正を加えているのだが、シンプルであるべき表現をくだくだしくしてるだけでなく、ややぎょっとする修正(引用イタリックの箇所)を行っている。彼は、NPDがもっと攻撃的な傾向を持っていると訴えたがっているのだ。

Constantly envious of others and seeks to hurt or destroy the objects of his envy or the sources of her frustration.

Vaknin, Sam. Malignant Self-love: Narcissism Revisited (FULL TEXT, 10th edition, 2015) (p.3). Narcissus Publications. Kindle 版.

 しかしDSMがNPDの攻撃性を強調しないのは、私は正しいと思う。攻撃性はNPDではなくサイコパスの特徴なのである。
 Wikipediaの彼のページの経歴によると、1985年頃にNPDの診断を受けたが当人が納得しなかったようで、その後、彼の起こした犯罪での仮釈放の条件がメンタルヘルス評価を受け入れることだったためNPDということになったようだ。しかし、もし仮にこれらが誤診だったとすると、彼の自認と客観基準のズレに関して説明がつくような気がするわけなのだ。
 詐欺師から心理学の教授になってしまうサム・ヴァクニンの知的パワーには敬服せざるをえないが、怪しさはつきまとう。過去には、Wikipediaの編集者も彼の取り扱いに苦慮したようで、議論になっているが、サム・ヴァクニン個人のページは今もWikipedia上に存在するし、他のページでも専門家のように記載されていたりする。

 Shahida Arabiはこの微妙なサム・ヴァクニンからかなり影響を受けているようで、彼女の微妙さを裏付けている気がする。


追記(2022/12/31):
 サム・ヴァクニンの怪しさが光るわけのわからない文章。ナルシシストである親がナルシシストである子供をどの程度発生させるかについての叙述。親から子へ連続するのは非常に少数派だと言いながらも、ナルシシストである子供から見て、その親や養育者のうち大抵一人以上はナルシシストだなどと述べている。子だくさんなカルチャーを前提にしているのだろうか?何を言いたいのかよくは分からないが、根拠や出典も不明。サム・ヴァクニンは万事この調子。しかしこの無責任さがまさにナルシシストの兆候ではあるのだが。

At the risk of over-simplification: narcissism does tend to breed narcissism, but only a small minority of the children of narcissistic parents become narcissists. This may be due to a genetic predisposition or to different life circumstances (like being the firstborn). Still, most narcissists have one or more narcissistic parents or caregivers.

Vaknin, Sam. Malignant Self-love: Narcissism Revisited (FULL TEXT, 10th edition, 2015) (p.616). Narcissus Publications DOOEL. Kindle 版.

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