英語メモのブログ記事

 今年に入って幾つか英語教材を買ったのだが、その中の一冊で、英語講師たちの座談のような付録音声を聴いていたら、TOEICで何十回もフルスコアを記録しているとされるひとり(日本人話者としては非常に発音がいい部類だと思う)がまったく自然に非常に基本的なことを間違って、印象的だった。具体的に彼が間違ったのは、(英語に限らないがYES/NO疑問文で)質問と応答の時制が必ずしも一致しないのに、常に一致するかのように自ら切り出して語ってしまった部分だ。付録内ではすぐに他の講師の方がフォローしていてやんわり訂正したのだが、考えてみればネイティヴでも英文法の知識がなくても(あるいは誤った知識を持っていても)実際の会話や文章を正しく構成できてしまうということがあると思うが、もはやそれに近いのかもしれないと思ったりした。
 文法知識に頼らなくても感覚だけで英語を操ることができるレベルになれば、ある意味本当の熟達者だと思うが、そうなろうとすることは一度覚えた文法知識を忘れようとすることと似通っているかもしれない。彼は英語講師として、ただ熟達するだけでなく英語の文法的な知識を生徒たちに伝える作業が業務としてあるはずなので、そこにある種のジレンマが存するかもしれない。その奇妙な陥穽を避けて、ネイティヴの英語教師(英語圏の国語教師というべきかもしれない)のような地平に到達できるかどうかということが本当のゴールだと言えるかどうか、私には断言できないがそうかもしれない。
 彼がYoutubeに10年にわたりアップロードしている動画のうち幾つかを見てみたが、特に話体に関して、多少訓練された日本人英語とはかけ離れた流暢さがあった(NHKのラジオ英語のどの日本人講師よりもうまいと思う)。経歴によると帰国子女でもなく留学経験すらもないようなのに、長きにわたり非常な努力をしてきたに違いないが、その末にもしも「英語がうまいだけの日本人」になったのだとしたら一種のホラーだという思いが殆ど視聴回数の伸びない動画のサムネイル一覧にオーバーラップしてよぎったのだが、もやもやする以上に腑に落ちるようなところまでは行かなかった。断片的な情報から英語好きのなれの果てのイメージを彼に押し付けることは不当に違いない...。
 少なくとも、語学の習得が自己目的化しないように注意しないといけない、と改めて思った。


追記【2019/02/24】:
 どうも「TOEIC英語」のような世界があるらしく、YES/NO疑問文で質問の時制と一致していない応答はたいてい不正解肢、という暗黙のルールがあるらしい。これが原因かどうかわからないけども。
 ただ、現実の会話では質問と応答の時制が一致しないことは少なからずあると思う。特に質問の前提が誤っている場合など。

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 このところまた、ちょっと英語力が上がったかなと自惚れかけていたのだが、読書で久方ぶりに意味が取れずに小一時間もうんうん唸ってしまったので(途中買い物には行ったがこの事ばかり考えていた)、そのカーンバーグの文章を。

 Given the frequent inhibition of female sexuality during adolescence and the painful awareness on the part of a woman who has finally, after years of marriage, grown out of her own oedipally determined adolescent inhibitions, some envy and jealousy of her daughter, who may now be achieving what she, the mother, achieved only after many years of painful growth, are only natural.
Kernberg, Otto F. "Object Relations Theory and Clinical Psychoanalysis"(p229)
 要は、(当時の米国社会で)苦痛を伴いながら思春期を克服した母親が、これからそれを乗り越えようとする思春期の娘に、嫉妬や羨望を持つということだと思うのだが、こういう面倒なセンテンスが出てきても、初見だけでさらっと構造的に理解できる人はそこそこな手練であろう。
 いやぁ、まだまだだなぁ...。

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