2018年6月アーカイブ

 以前紹介したKernberg, Otto F. "Object Relations Theory and Clinical Psychoanalysis"を優先順位低でホントにちびちび読み進めているのだが、内容的に面白くなってきてもどかしい。
 コフートも似たり寄ったりなのだが、カーンバーグは"total object relation"というようなことを結論じみた局面で主張する。これは、遡れば、早期の母子関係に於いて健全なコミュニケーションが発達に合わせ適切かつ網羅的に成就しているような状態であり、後には、異性関係などで相手と忌憚のない人間的な付き合いができることにつながる。
 私がこういったコンセプトに多少の懸念を持つのは、「正しい母子関係」としてある特定のフォーミュラを前提にしているようなニュアンスが付随するからということがある。どこかに母子関係の正しい形式があるとしても、それは誰がどのように証明するのか?また、コミュニケーションの全体性を強調する場合、ネガティヴな関係性もそこによく含まれてしまうのではないか?
 しかし、このところなんとなく考えていて、"total object relation"はもっと主観的なものでいいのだと、受け取り方の視座を変えつつある。要は当人が肯定的に"total"だと感じられればそれが"total"たりうるのだ。仮に、第三者から見て全然"total"じゃないように見えても。あまり厳密な規範性は想定しない方がいい。

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