2009年4月アーカイブ

『狂気の歴史』 ミシェル・フーコー
 まず、翻訳はあまりよくない。
 600ページの大部からなる古典だが、歴史書としての学術的な批判を試みるつもりは毛頭ない。
 フーコーは精神医学の素人として、狂気の歴史そのものを考察するのではなく、むしろその周囲をぐるぐる旋回している感じ。また、エポックを追いながら一貫して狂気概念の相対化に含みを残している。なんというか全体を通して『精神病は人為的に作られたのだ』と言いたげなのだ。同性愛者だったフーコーはどちらかというとマイノリティの側に立ってものを言う傾向があるだろうと思うが、この作品を著すに当たっての彼にも、太陽に憧れるようなその種の人々による暗い欲望を感じないでもなかった。
 或る精神的な病にある者の狂気を、そうでない者が、同じ病に罹ることなしに共感することはできない。それなのに、フーコーはその不可触の部分を想像力の敷衍で無理に補完しようとするため、どうしたってディテールにおいて的外れにならざるをえない。
 確かに、「理性-非理性」の対立を、古典主義時代の医学的「理性」による笑い話のようないい加減な治療法や解釈を見たあとでは、素直に想定しがたい面があることは否定しない。完全な理性を持ち得ない以上、「正常な」側の人間も決して真には正常などではないのだ。
 大多数と似たように欠けた人々が健常者と呼ばれ、より欠けた(orいびつに欠けた)人々が狂人と呼ばれるだけのことかもしれない。誰もが「欠けて」いることとして変わりはないと言えば言えるのかもしれない。

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 また古い岩波新書の『日本の思想』丸山真男を読んでいて、本書は学生時代に読んで初見ではない訳だが、今読むと私としてなんだか全然説得的ではないことに驚いた。ササラ文化とタコツボ文化と言われても、なぜだか全然ピンとこなくなっている。いったい日本型文化をタコツボ文化と表現することは本当に適切だろうか?また、「である」ことと「する」ことの対立も身分社会と自由社会の類推として説かれるが子供だまし風に感じられるし、関係ないが浅田彰の「構造」と「力」の概念分けの祖型に見えてこなくもなかった。
 それにしてもこの胸に重く残る違和感は何だというのか。

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 岩波の古い新書『日本の近代小説』中村光夫を読んでいてゾラの系譜からなる自然主義について小杉天外の印象的な言葉があったので引用。

「自然は自然である。善でも無い、悪でも無い、美でも無い、醜でも無い、たゞ或時代の、或国の、或人が自然の一角を捉へて、勝手に善悪美醜の名を付けるのだ。小説また想界の自然である。善悪美醜の孰(いずれ)に対しても、叙す可し、或は叙す可からずと羈絆(きはん)せらるゝ理窟はない。」 (明治三十五年「はやり唄」序)
 カントの物自体のような自然と創作の自然を並行的に、或いは通底するものとして捉えている。天外の素朴かつ原初的な思想的態度が窺えておもしろい。

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 この事件、新聞記事その他で詳細を知るには限界があるが、果たしてどの程度常習的にやっていたのか。また犯人(らしき人物)の某国会議員ブログへの投稿が意味するものは何なのか。以前にも書いたが、私は日本の精神医療についてある種の「疑い」を持っている。この学問領域において最も先進的と思われるアメリカで書かれた書籍を読んでも、まだまだ沢山の発展の余地があると率直かつ謙虚に表明されていたりするのに、メディアに露出する日本の精神科医達の不自然なほどの断定的態度に猜疑を感じないではいられないのだ。
 精神科医という仕事は現状においては、不十分な武器で怪物と戦うようなものである他ないだろうと想像する。名もなき誠実な精神科医達はおそらく、他科に対して比較的安いと言われる報酬に甘んじながらも、現場で悪戦苦闘して合わない辻褄を合わせる手探りのような毎日を送っているに違いない。そうであって欲しい。
 ただ、巷に流布するセールストークのような「必ず治ります」の安請け合いから、この種の医師の側の投薬中毒、直接診てもいないのにTVに出て雅子妃をディスチミアだと「診断」する輩まで、犯人(らしき人物)が国会議員のブログでコメントするように確かに日本の精神医療は「惨状」に近いのかもしれない。

処方せん出さず睡眠薬を販売、大阪の精神科医ら書類送検
 不十分な診察で処方せんを発行しないまま知的障害者らに睡眠薬などを販売したとして、近畿厚生局麻薬取締部が、大阪府羽曳野市の精神科医・角田鉄太郎容疑者(54)と奈良県御所市などの薬剤師4人の計5人を、麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で書類送検していたことがわかった。 角田容疑者は容疑を認めた上で、「診療報酬が目的だった」と供述しているという。 同取締部によると、角田容疑者らは共謀して昨年3~9月、同県内の知的障害者施設3か所の入所者計57人に、処方せんがないのに数百錠の睡眠薬などを販売した疑い。角田容疑者は、薬剤師4人に錠数を連絡して睡眠薬を各施設に届けさせ、後日、処方せんを薬剤師に渡していたという。(2009年4月13日20時26分 読売新聞)
「面倒で」と数年前から違法行為 麻薬取締法違反容疑の医師
 処方せんを発行せずに睡眠薬などを譲渡したとして麻薬取締法違反の疑いで書類送検された角田鉄太郎医師(54)が、数年前から同様の違法行為をしていたことが13日、近畿厚生局麻薬取締部への取材で分かった。 麻取部によると、角田医師は「処方せんを作成するのが面倒だった」と話している。睡眠薬を譲渡した患者を診察しないケースがあったが、自らが開業する奈良県葛城市の診療所「クリニック サザン・ウインド」で診察したことにし、診療報酬を不正に受給した疑いもある。 送検容疑は昨年3月と9月、奈良県内の薬剤師4人と共謀し、同県の知的障害者施設3カ所の入所者に、処方せんがないのに睡眠薬や抗うつ剤などを譲渡した疑い。 麻取部によると、同クリニック内で患者を診察していた様子はなかった。(4月13日17時40分 山陽新聞)

で、ネット検索すると、当人と憶測される同姓同名者が島尻あい子参議院議員のブログ2008年01月02日のエントリーに対してコメントしている。
前略
御多忙のところ畏れ入ります。
賢明な先生におかれましては、御自分の選挙区の医療崩壊の惨状について既に御存知のことと存じます。
私は、精神科医を仕事にしておりますが、先般、自民党内の小委員会で『厚生労働省の「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案 - 第二次試案 -」をもとにした「診療行為に係る死因究明制度等について」制度化する動きを知りました。

先生は国会議員として様々な業績を重ねてこられたことは重々存じております。
その先生の御経験からご覧になって、御意見をお聞かせ下さい。

このままでは、日本の地域医療は、確実に崩壊すると危惧しております。救急車は走っても、搬送先の病院に医師がいなくなってしまうと思います。
拙速な『医療事故安全調査委員会』の設置を行うことは、今以上に医師が地域の救急病院だけではなく、あらゆる急性期の患者さんを診察する医療機関から医師が一名もいなくなってしまう可能性が非常に高いと考えております。

宜しくお願い申し上げます。
Posted by 角田 鉄太郎 角田 鉄太郎 角田 鉄太郎 at 2008年01月16日 13:21

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 Paged Archives Pluginで非常に簡単に、Movabletypeにおけるカテゴリのページ分割ができるのだが、全然知らなかった。瓢箪から駒で今朝インストール。このカテゴリ表示の処理が不服でブログから遠ざかっていた面も幾らかあったわけだが、大したことではないが、なんだか気が晴れた。
※MT4.2以降の場合は<MTEntries limit="$limit">を<MTEntries>のみとしなければ動作しないので注意。

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