2009年12月アーカイブ

 今日四条大宮地下鉄駅上の本屋(ブックファースト)に寄ったのだが、フロアの奥の方で幾分棚に隠れるようにしながら携帯電話で話し続ける一人の中年男性を見かけた。地味な背広とハーフ・コートで散髪したてのような感じのその人物は、少なくとも私が単行本やら雑誌やらを立ち読み店を出るまでの15分位の間は、周囲の迷惑を顧みて声を潜めたりすることも特になく電話の相手と駄弁を弄し続けたのだけれど、その話の内容がなぜかずっと汲み取り式便所とトイレットペーパーに関してだった。眼前の人々の、台や棚から本を取るために腰をかがめる動作や、本のページ(=紙)をめくる仕草が、彼の想念に何らかの影響を与えているのではないかと疑うことは、おそらく考えすぎというものであるのだろう。
 師走であわただしいせいなのか、このところ意味の断片のような心地の悪い遭遇が他にもあった。

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日本版FCCがいよいよ検討開始,総務省がフォーラム立ち上げ(日経ニューメディア)

 原口総務大臣が就任早々に、党の政策方針であったはずの周波数オークションに対する慎重姿勢を打ち出したので、私として既に非常に気持ちが萎えているのだが、日本版FCCをどういうものにするかを議論するフォーラムが今次発足するようだ。「国民の権利保障等の在り方~」と銘打っているのが微苦笑を誘う。第1回会合は2009年12月16日に行われるらしいが、議事録は公開されるのだろうか。不都合な問題を無視・矮小化しながら、結局はありきたりに通信と放送の融合促進やBPOを多少拡充するみたいなことで納まりそうな予感がする。
 フォーラムに呼ばれたジャーナリストの上杉隆氏がブログで何かコメントをしている。

自分の仕事分野のルールを、政治家とか、役人とか、学者とか、業者とかに勝手に決められてたまるか、ということであります。

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 乱世には自己存在に立ち返れ、というわけでもないのだが、昨今私的にプチ実存主義ブームであり、このところ幾冊かそれらしいものを読んでいた。それで覚え書き程度のことなのだが、「実存」の定義がハイデッガーとサルトルではまるで違うらしいので、ここにその旨書籍から書き写しておく。

ハイデッガーの場合、実存とは「存在の光のなかに立ちいでる」こと、人間が主体性の枠を破って存在そのものの光の中に帰りたつことであるのにたいし、サルトルの場合、実存とは、みずからの存在をみずからが選択する主体性の意味である。同じ言葉であるけれども、この相違はあらかじめはっきりしておくことが必要であろう。

(人文書院 『実存主義とは何か』 J-P・サルトル p157訳注より)

 上の引用は私としてはずっと不分明だったもやもや的なものに対する端的な解説になっている。
 実存主義が主体礼賛の哲学であるという先入観のままハイデッガーを読み通そうとすると、大抵どこかで混乱する。あるいは、そのままにサルトルの方を読んだとしても、今度は主体そのものの根拠について(昔ながらのデカルトのテーゼを神は捨象して後なぞるというだけで)特に新しい思索として深められているわけではないことに落胆する。デカルトは、対自の関係性によって主体を成立させるシステム(Cogito ergo sum.)それ自体が神によるものだと前提している。しかしサルトルは、なぜかそのような更なる外部(別に神でなくてもよいのだが)への予感を不自然に禁じ、対自の関係性だけで主体存在の証明は済んでいるに等しいと強弁する。それは根拠のない飛躍的な態度決定であり、まったく彼固有の狭隘な信仰であるに過ぎないと思える。
 サルトル自体、二歳で父親(≒超自我→神)を失い、少年期には祖父に匙を投げられる程に母の金をくすねる等の逸脱行動があったようで、その他状況証拠の上に憶測を何枚か重ねて書いてみるのだが、ちょっとある種の反社会性人格の成り立ちに似ている気もする。ある程度まで父性喪失者に共通する傾向とも言えるだろうけれど...。反社会性人格は自己の内部に良心を持たないので、決して勝てない外敵としての神(等)がいなくなってしまうと、倫理として自己の行動を規制するものが何もなくなってしまう。だからサルトルは神がいなくなった後の倫理のありかを最も重要な問題のひとつだとして殊更に心配するのだと憶測できるかもしれない。
 また、いわゆる「自由の刑」概念も反社会性人格が獲得しがちな人生訓に似ている。
 レジスタンス(!)としての実践的選択(の可能性)がもたらすとされるサルトル的な主体幻想は世俗的かつ偏頗にすぎて、本来哲学の主題にはなじまない。哲学が問題とすべき主体の自由とは、たとえばより根底的に、因果律に対峙すべき主体の自由のようなものであったはずだ。

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