この数年、深夜に近くのコンビニか100円ショップに行こうとすると、途中にあるバス停のベンチに座っている或る人物を目撃する。彼女は起きていることもあれば自身の古びたキャリーバッグに寄りかかってうとうと眠っていることもある。すでにバスの運行時間が過ぎていて始バスまでも3~4時間の猶予はあるような深夜の時間帯に、ずっとベンチに蹲るように座っている。よく分からないことに、そのまま昼や夕方まで断続的に同じ場所で見掛け続ける日もあるので、元々バスに乗ることが目的ではないのかもしれない。
何か一杯に詰め込まれている小型のキャリーバッグのハンドルには杖やレジ袋が掛けられている。不自然なほどに眉だけ大きく描いたその老女は、まれにバス停近くの側溝でそのまま裾をたくしあげて排泄行為をする。また、バス停背後の賃貸マンションの一階にある電飾用コンセントから携帯電話のために盗電していることがあった。
それにしても、未だ来ぬ非在の何かを待ってでもいるのか、恐らくは「おむかえ」を待つような年代であるにはある。
ごく最近そのバス停の向かい側に新しく24時間スーパーができた。
私はすぐこれまで通っていたコンビニや100円ショップに行くのはやめて、より距離が近くて品揃えのよい当該スーパーに行くようになったのだが、一昨日初めて夜間にそのスーパーに行くと、あの老女が商品の陳列スペースでペットボトルのお茶を飲みながら何か食べていた。もしかしたら棚の売り物をそのままとって食べてるのかとも思ったが、レジを終えたりした手持ちのものを取り出して飲食しているだけなのかも知れず、その判断は付かないにしても売り場の真ん中で飲食していること自体が奇異で驚きを誘った。誰か人が近付くとわざとらしく咳をしてみせていた。
昨夜もスーパーで彼女を見掛けた。購入したプリンのカラメルの量についてレジの店員に延々クレームを付けているようだった。遮るように私が籠を載せると、誰もいない隣のレジ台に私物を並べ整理し始めたようだった。
バス停に棲む老女
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