英語版Wikipediaの"Depersonalization"項目の拙和訳です。離人症に関する日本語ソースはネット上にわりとあるのですが、Wikipediaの日本語版には独立したページが存在せず、気になったので英語版を訳してみました。
離人症は最もポピュラーな心理的症状のひとつで、離人感とでも言うべきか、一過性でごく軽いものなら誰でも経験があるようなものなのですが、その割にあまり一般に知られていないかもしれません。
離人症自体には解離性健忘は症状として含まれないはずですが、訳文中に微妙な記述があるので注意してください。ただ、併発するケースのことを指しているのかもしれません。
離人症
離人症は、異変をきたした自己認識のことである。自身を見つめる感覚により成り立っていて、状況に対するコントロールは行わない。対象者は彼らが変化し、世界が曖昧で、夢に似た、現実性が薄まった、あるいは意味を欠いたものになったと感じる。実際、多くが「夢」の中で生きていると感じるため、不穏な経験となる可能性がある。慢性的な離人症は離人症性障害に当てはまり、これはDSM-IVで解離性障害のひとつとして分類されている。ある程度の離人症と現実感喪失は、一時的な不安やストレスに支配された誰にでも起こりうるのだけれど、慢性的な離人症は激しいトラウマや長期の不安やストレスを経験している諸個人により深く結びついている。離人症-現実感喪失は、解離性同一性障害や特定不能の解離性障害(DD-NOS)を含む解離性障害の領域の中で、単一で最も重要な症状である。不安障害、臨床的抑鬱、双極性障害、境界性人格障害、強迫性障害、偏頭痛、睡眠遮断、のような他の幾つかの非解離性障害でも顕著な症状となる。例えば享楽ドラッグの使用等においても、思わしいと考えられ得る。
社会心理学および特定の自己カテゴリー化理論では、"depersonalization"という語は別の意味を持っており、「ある特徴的な社会的カテゴリーの一例としての自己に対するステレオタイプ化された認識」に相当する。
1 解説
2 広まり
3 薬理学的・環境的原因
4 治療
5 研究
6 関連項目
7 参照
解説
離人症を経験する人々は、当の人物またはアイデンティティーに帰属しないものとして、彼らの身体感覚、気分、感情、ふるまい、を察知してしまうので、自身の個人的な身体性から切り離されていると感じている。離人症を経験した人はしばしば物事が非現実的でぼんやりしていると主張する。また、自己に対する認識が壊れている(それゆえの名称)。離人症は非常に高いレベルの不安をもたらす可能性があり、それはさらにこれらの知覚を増大させる。離人症の人々は、彼らが見たり経験したりしたことを第三者のもののように、しばしばほとんど思い出すことができない。
離人症がその人の自己意識の中における非現実感の主観的体験であるのに対し、現実感喪失は外界の非現実感なのである。ほとんどの著述者は現在、離人症(自己)と現実感喪失(状況)を独立した構造体とみなしているが、多くが離人症から現実感喪失を切り離したがらない。
広まり
離人症は、不安感情と抑鬱感情に次ぐ、第三の最も一般的な心理的症状である。離人症はパニック障害のような不安障害の症状である。また、これは睡眠遮断(しばしば時差ぼけに苦しむとき起こる)、偏頭痛、てんかん(特に側頭葉てんかん)、強迫性障害、ストレス、および不安に付随して起こる。内受容暴露(interoceptive exposure)は離人症を惹き起こす非薬理学的方法である。
学部大学生に関する研究で、解離経験尺度(Dissociative Experiences Scale)の離人症・現実感喪失に対する下位尺度において高い値を示した個人は、よりはっきりしたコルチゾール反応を表した。
薬理学的・環境的原因
離人症はいくらかの人々により、特に気分を変容する享楽ドラッグの影響下でそれを経験した人々により、望むべき境地として述べられてきた。カフェイン、アルコール、大麻、そしてミノサイクリンのありうる副作用であるのと同じく、解離症状や幻覚剤の作用である。多くの薬物に対する古典的な禁断症状である。
ベンゾジアゼピン依存症(これはベンゾチアゼピンの長期使用により起こりうる)は、慢性的な離人症状と知覚障害を一部の人々(特に安定して毎日服用している人々)に惹き起こし、これはまたベンゾジアゼピン離脱症候群の長引く表徴にもなりうる。
デイヴ・グロスマン中佐は、彼の著書"On Killing"において、軍事訓練が、同情心を抑圧し他の人間を殺害しやすくするよう、兵士たちのうちに人工的に離人症を作り上げることを、示唆した。
治療
治療は、起源において器質的であるか心理的であるかによるところの、根本原因に依存する。もし、離人症が神経疾患の症状であるなら、その特定の病気の診断と治療が最初のアプローチとなる。離人症は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー、多発性硬化症(MS)、神経ボレリア症(ライム病)、あるいはその他脳に罹患する神経学的疾病、のような病気の認知的症状でありうる。偏頭痛を伴う離人症に苦しむ人々には三環系抗鬱薬がしばしば処方される。
もし、離人症が発達上のトラウマのような心理的原因による症状であるなら、治療はその診断に依拠する。極端な発達上のトラウマが、単一に結合するアイデンティティーの形成を妨害するものである、解離性同一性障害や発達障害としてのDD-NOSのケースでは、治療は適切な精神療法を、また摂食障害のような付加的(合併症的)な障害のケースでは、そのような個人を扱う専門家のチームを、必要とする。境界性人格障害の症状である場合もあり、これは適切な精神療法と精神薬理により長期にわたって治療されることがある。
慢性的な離人症の治療については離人症性障害の中で考える。
ニューヨーク市のコロンビア大学で最近完成した研究では、離人症性障害の治療に対して経頭蓋磁気刺激(TMS)から有益な効果が見出された。現在、しかしながら、FDA(食品医薬品局)は離人症治療に対するTMSを承認していない。
最近のロシアの研究では、オピオイド・ドラッグの中毒効果を無効化するナロキソンが、離人症性障害をうまく治療する場合があることを示した。この研究によると、「14名の患者のうち3名において、離人症状がまったく消え、7名で目立った改善が見られた。ナロキソンの治療上の効果は、離人症の発症をめぐる内因性オピオイド系の役割に対する証拠を提供する。」としている。
研究
ロンドンにある精神医学研究所の離人症研究組織が離人症性障害研究の世界的リーダーである。ここの研究者たちは、この障害に対し、簡略化されたラベルとして頭文字のDPAFU(Depersonalisation and Feelings of Unreality)を使っている。
関連項目
(省略)
参照
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