精神の科学 第七巻 p137より抜粋 |
今で言う「共依存」みたいなことの分析で、フロイト的解釈の線に従っていてかなり古いのだが、相当に的確な叙述があるように思えた。抜粋した右図は自己愛的夫婦の悪循環を表していて、ナルシシスト同士の男女が主と従の機能に分かれて一体化し、まるで閉じられた一個の回路のように、自己愛的小宇宙を構築しながら内部に葛藤を再生産している様を表している。
カップルだけでなく親子の場合もある。『この種の母親は子供を自分自身の一部としてしか認識していない。子供の自律性が育ち、自分で話し歩くことを学び主導権を発展させ、母親から離れていこうとすると、子供が自分自身を固有の自己として感じられないようにするために戦略をめぐらせる。~(p134)』
口唇期から始まるフロイトの発達理論の前段階に自己愛の項目を設けて各段階ごとに悪循環を解説しているが、自己愛以外の項目はやや微妙かもしれない。あるいは肛門期よりあとはトーンダウンしてぼやけていく感じもなくはない。
力ある古い本により、雷撃に撃たれることがある。理論の新旧は問題ではなく、その時代に生きた人々の現実が封じ込められているから強いのだと思う。
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